『ラジオ深夜便の思い出』
神門:宮崎で生まれ育って、NHKばっかり聴いてたんですって?
福島:そうなんですよ。
私、中学校2年生のときから『ラジオ深夜便』にハマりましてね。
ずーっと録音してたんですよ。
石垣:中学2年?
福島:はい、中学校2年制のとき。
神門:ちょっとごめんなさい。
中学2年、僕もだいたいそれぐらいの時期に深夜放送っていうものにハマってオールナイトニッポン聴いてたんですよね。
福島:はいはいはい。
流れてました、オールナイトニッポンも。
私のときは矢口真里さんがやったりしてたかな。
神門:時代を感じます。
それで、その中で『ラジオ深夜便』だと?
福島:そうなんですよ。
まぁ、大元辿れば、私は落語研究会に所属していたと申しておりましたが。
父がね、落語好きなんですよ。
その影響で初めて買ってもらったCD、レコードとかね、音源が圓生の死神って話なんですよ。
三遊亭圓生のね。
その死神を聴いて、落語好きになりですね。
『真打ち共演』の録音をするようになるんですよ。
神門:『真打ち共演』!
福島:ええ、NHK第1、夜8時から放送の。
それと『上方演芸会』、『浪曲十八番』このあたりを録音するようになって。
神門:中学生が(笑)?
福島:中学生が。
で、一生懸命話芸の研究にここで没頭しましてですね。
それで、それを聴いてるときに流れで玉置宏さんと立川談志さんがやってた特番みたいなのがあったんですよ。
たぶん、特番だったと思うんです。岡晴夫さんの特集やってて。
それ聴いて、「あっ、知らない曲だ」と思って。
で、もっとこういう曲が流れてる番組ないかなと思っていろいろ聴いていたら…
2時台、3時台『ラジオ深夜便』。
2時台「ロマンチックコンサート」。
3時台の「にっぽんの歌こころの歌」。
「これだ!」と思いまして。
120分テープ裏表、オートリバースで録音して。
神門:ハハハ(笑)
福島:ずっっと家にアーカイブですよ。
月-日で録音してましたからね。
神門:え?録音してそれ上からまた上書きするんじゃなくて全部取ってたんですか?
福島:じゃなくて、貯めてくんです。
だからもう大変!
神門:残ってます?今。
福島:残ってます。順番に。
神門:すごいな、おい…
福島:ある時期から場所取るなってことで、MDに移行しましたけどね。
石垣:移し替えたんですか?
福島:はい。システムが変わりまして。
曲名と歌っている人、作詞、作曲者をノートにとる。
アーカイブ化していくということをやっておりましたね。
神門:それはリアルタイムで聴いて?
録音して後で聴くとかいうことじゃなく?
福島:リアルタイムも聴きますし、録音して後で聴くこともありますし。
もう何回も聴くので。
音楽をとにっかういっぱい集めたかったんですよ。
今、ちょっとまた変わってきてますけど。
最近でいうと昭和50年代、60年代ぐらいの歌がやっぱりね、『ラジオ深夜便』でも中心になってきてますけど。
神門:ちょっと変わりましたね。
福島:私の頃は結構…私の頃っておかしいですけど。
私が中学生の頃は、まぁ、戦前、東海林太郎さんの特集ですとか。
「今日は藤山一郎さんの特集をお送りします」と。
「古関裕而さんの特集をお送りします」とかいうのがあって。
それを録音して、それがやっぱり聴きたかったんです、私は。
その頃の歌が好きでずっと貯めてたんですよね。
勉強の合間とかに聴いたりしてましたね。
神門:周りのお友達は聴かないでしょう?
福島:そうなんですよ。
ここが結構大きな問題で。
私の世代、昭和60年代生まれくらいで古い歌が好きなんだよねっていうやつはちょこちょこいるんですよ。
高校の時の同級生、中学の時の同級生もいて。
「え?じゃあどういうの聴くの?」と聞くと、「百恵ちゃんだよ」とかね。
中三トリオ以降ですね。
神門:70年代くらいまで?
福島:70年代、「阿久悠いいね」とか言うのが通な感じなんですよね。
ですから私はその辺りの子と唯一喋るテーマがある程度かぶるんですけど。
でも、僕が本当に好きなものっていうのは、もっと古いですから。
合わせるために、そいつらと喋る……だってこの人たちが話聞いてくれないと私の話誰も聞いてくれなくなりますから。
この人たちを喋るためだけに聴いてましたね。阿久悠さんの作品なんかをね。
合わせようと思って。出来るだけすり合わせよう、すり合わせようと思って聴いてました。
石垣:www
神門:ただすり合わせるんだけども、すり合わせた結果がこちらにグーーっと向いてくるってことは?
福島:ない!もう一切こっち向いてくれない。
もう別の断絶があるんですよね。そこにね。
そこに違和感があったんですけど、深夜便だけはそれを当たり前のように救ってくれるというと言いますか。
伴淳三郎さんの話とかするじゃないですか?
神門:伴淳…(笑)
福島:「アジャパー」みたいなこと言ったりするんですよ。
しかもNHKのOBのアナウンサーのかたが「アジャパー」とか言ったりするから「わぁ~、すごいなぁ」と思って聴いてたんですよね。
神門:では、当時…だからそういった曲を聴き始めてもう何年になります?もう20年くらい?
福島:ですね。10代の半ばぐらいですからね。
神門:ここで一曲福島さんからリクエストを頂きたいなと思っておりましたて。
福島:あっ、いいですか?
これは私がですね、さっき言った談志さんと玉置宏がやってた番組の『ラジオ深夜便』で最初にあったのが近江敏郎さんの特集だったんですよ。
私が初めて深夜便に出会った回がね。
神門:40歳ですけど、近江敏郎さんっていったらもう審査員をされるぐらいのイメージですよ。
福島:そうですね。タモリさんの番組とかでたまに出てきたりしてね。
そんな感じなんですけど、その若い頃の歌声ですね。
近江敏郎さんと一緒に二葉あき子が歌ってらっしゃる『黒いパイプ』という歌を聴かせしてください。
〈♪『黒いパイプ』二葉あき子〉
神門:はい、ワンコーラス目は二葉あき子さんの歌声が出てまいりましたね。
福島:はい。広島県出身。
神門:ちょいちょい挟みますね。
福島:いいお声ですね。
神門:これが近江敏郎さん?
福島:はい。今歌ってらっしゃるのが近江敏郎さん。優しい声。
これをね、中学生ぐらいのときに聴いて感激したんですよ。
一番聴いたことのないジャンルの曲だったと思うんですよ。
初めて出会った曲で、誰も友達も知らないから。
これ私が聴かなかったらあと誰が今後聴くんだろう?と思って。
で、聴くようにしようと思ったんです。
神門:それは、何だろう?
自分が博物館になろうぐらいの勢いで?
福島:ええ、はい。
僕が聴かなかったらもうたぶん他に聴く人がいなくなるはずだと思って、使命感で。
それで聴いてましたね。
石垣:重苦行でしたか?
福島:イヤイヤじゃないんですよ、全然イヤイヤじゃなかったですよ。
もう楽しくてしょうがなかったですね。
《続く》福島アナのファッションのこだわりとは?